愉快な物語、面白い歴史、推理小説などのblog

どうせ見るなら・読むなら心から楽しくなる、未来が明るい物話がいい。そして時々コアな話も。そんな話を子どもたちや友人に紹介したい。司馬遼太郎と宮崎駿のファンが、そんなことを思いつつ好きな作品の感想などを述べてます。

あとがき(『竜馬がゆく 怒濤篇』)、無題(平尾道雄著『竜馬のすべて』) (司馬遼太郎が考えたこと3 より)

長崎。竜馬がその船に憧れた青春を、そして夢を生きていた長崎。私も修学旅行で初めて行って、明るい景色とカステラで大好きになった町(笑)。

そして、故郷土佐の中で竜馬を記録した、司馬さんも尊敬する史家、平尾道雄氏。

 

「青春」の字の如く、踊るような竜馬の活躍を感じたのが、この長崎を舞台にした頃である。 

あとがき(『竜馬がゆく 怒涛篇)』では、あまり物語自身には触れられていない。ただ、竜馬が闊歩した実際の長崎を歩かれている。其の中では、亀山社中の亀山。そこから稲佐山を眺め、丸山の花月に遊びに行く情景を思い描かれていた。

こうして実際に歩いた情景から、少し昔のことを思い出し、ありありと竜馬らがそこにいるかのように描かれていた司馬さん。私も坂を上がって亀山社中を見たことがあるが、思ったより狭くて、この中で近藤長次郎などのドラマが展開されていたのかと思うと、胸が一杯になる。

長崎では、竜馬も一角の地位となり、いよいよ時代が動いていく。グラバー邸での長州伊藤や井上の武器買付、薩州の小松や豪商の小曽根家との交流、そして丸山花月でのお元との出会いなど。物語も時代も展開し、クライマックスが近づいているのがやはり良いものだと思う。

個人的には、高杉や五代が長崎から上海に行き、そこで見聞した西欧列強や自己中心的な中国(清国)の支配層が地域の人々に与えていた惨状を見て、「日本も眠ったままでは列強にやられてしまう」と現実を直視し、列強に対抗するためには倒幕し、統一近代国家を目指そうと決意する流れも好きだ。高杉がその価値に気づくきっかけとなったのも、間接的には海外に開いていた貿易港・長崎のお蔭であり、その地が持っていた比較的自由な雰囲気の影響もあるだろうと思う。

そんなことをつらつら考えていると、早くアフター・コロナとなり、環境が落ち着いてほしい、そしてまた長崎に旅したい、と思った。

 

『無題(平尾道雄著『竜馬のすべて』)』では、司馬さんが平尾氏の著書のほぼすべてを愛蔵し、読むたびに啓発されている、とベタ褒めされている。司馬さんに影響を与えた方の著書となれば、竜馬ファン、司馬ファンとしては、ぜひ読みたい。しかも平尾先生は土佐ご出身で、この巻の別のエッセイ『城北の丘の家に(平尾道雄著『土佐百年史話)』で、平尾氏は土佐城下士族の屋敷に住まわれていたと書かれていた。地元の史家ほど、竜馬を史実に沿って記録されるのに心強い方はないだろう。ぜひとも、司馬さんも接したそのご人格に、ご著書を通じて接したいと思う。