『風立ちぬ』
大正から昭和初期、関東大震災から第2次世界大戦に至る、厳しく激動の時代。
日本の若き航空技師・二郎の飛行機作りにかける情熱と、震災時に出会った少女・菜穂子との、再会して始まる儚くも美しい恋を中心にした青春映画。
感慨と余韻の残る映画だった。好きだな、と思った。
ただ、ジブリだけど小さい子どもにはちょっと難しいかも(笑)
同じジブリの『コクリコ坂から』のように、時代の匂いが感じられた。
人が生きにくい、とその時代を生きる人たちは思ったのかわからないが、厳しい時代に、人は何を想い、何を大切に生きていたのか。
コロナ禍に戸惑う今と、少し気持ちが重なって、見た。
始まりは空に憧れる少年二郎の夢。そして少年はイタリアの航空技師、カプローニを夢に見、東京の大学に進学し、飛行機を学ぶ。
その頃、関東大震災が発生し、ある少女・菜穂子たちを助けた。
時代は大戦へ向かい、就職先は、軍需産業に関係する会社。
それでも、いい飛行機を作りたいと思い、精を出す二郎。しばらくすると信頼や評価を得て、大学の頃からの親友本庄とドイツへ派遣され、技術を学んだ。このドイツでの本庄とのやり取りも、海外で仕事をするときの日本人としての気概が垣間見えて、なかなか良かった。
会社の上司・黒川や仲間達に恵まれ、仕事に邁進するも、自身が初めてデザインした飛行機は失敗。失意のうちに静養していたホテルで、菜穂子と再会する。
菜穂子は以前から自分たちを助けてくれた二郎に好意を抱いており、程なく二人は恋に落ちた。
次第に元気になる二郎。一方、菜穂子は結核を患っていた。
当時の結核は大病だが、それでも菜穂子と結婚したいと思った二郎。
その想いに応えて健康になりたいと願った菜穂子は治療に向かう。
そして、真っ直ぐな感情が二人の人生を昇華させていく。
ここからは自身で観て、浸ってほしいと思うが、ほんとにジブリは脇役もいい。
黒川の奥さんに、二郎の妹の加代。この方々の役割や言動が、素晴らしい。
粋であり、ストレートである。こういう「人との間」を大切にしたいな。
最後は、公開時の鑑賞中に思わず涙が浮かびそうになった、この主題というか心情にマッチしたエンディング「ひこうき雲」が流れた。思わず聞き入った。すごくこの映画に合ってると思った。
本作品は、時代やテーマが簡単なものではないので、いろいろな感想があると思う。
ただ私には、あの時代の中で、懸命に生きていた人の姿は、美しいと思えた。
映画『風立ちぬ』を見れて、よかった。