高田崇史氏の小説。
歴史と推理を合わせた物語を作られるので、その両方が好きな私にとって、全作読もうとしてる作者の一人。
「歴史は勝者が作って残すもの。だから敗者は悪役にされたり、記録から抹消されて、無かったことにされる。ただ、敗者の方に理があったり、人々から慕われていたと思われる事象が多い」という、歴史を知る人にとっては基本となる観点を反映した作品が多い。
今回は、『古事記』の中で語られる、「出雲」が舞台。
司馬さんも随筆の中で出雲の特殊な歴史的立ち位置を語られていたが、その物語である。
大国主命と素戔嗚尊をはじめとする古の神々について、雅という日枝山王大学の大学院生が研究対象に出雲を選び、その地を訪れるところから話は始まる。
知っていると思っていた出雲は、実はとんでもなく奥深い謎を秘めており、その謎を解き明かしていくというワクワク感が感じられ、その中現代でも事件は起こり、その謎解きが並行して展開されるという、この作者の恒例のパターンである。
読後の感想としては、「知りたかった出雲の古代の謎や神々のこと、各神社の特徴が知れて面白かった」が、反面「現代を舞台とした推理小説部分は、登場人物の設定や犯行動機がいまいちで、物語の進行には必要だがこの巻の謎解きとしては少し残念な印象」を受けた。
とはいえ、新たなシリーズの刊行は読者にとっては喜ばしいことであり、今後も続刊を楽しみたいと思った。