高田崇史氏の小説。
歴史ミステリーの大作である。
今回は、「源平時代」が舞台。
稀代の傑物平清盛が、池禅尼により頼朝の助命嘆願を受けるシーンから始まる。
当時誰しもが(平氏側だけでなく頼朝本人も)運命は定まったと思っていたところから、その結末は、我々子孫は知っている通り、逆転して大きな後悔に至る場面である。
物語では、源義経が活躍したとされる一ノ谷の合戦から屋島、壇ノ浦など源平の戦いを描くだけでなく、なぜ安徳天皇はあのような最後を遂げられたのか、そして義仲の本当の人物像、あまり語られることのない源頼政らの動向、そして鎌倉勢力内の権力闘争と、この時代を広く扱っており、そしてそれらほぼ全てが悲惨な内容であることに愕然とする。
頼朝の幕府での地位が常に危うかったことなど、高田氏の他の小説で知ったことも多く掲載されていたが、改めて俯瞰したとき、この時代を生きることは、天皇や貴族、武士の頭領家に産まれても大変だったことを思い知らされた。
少し前にアニメ化された平家物語を見て感慨深かったのが、この本を手に取ったきっかけだった。アニメでは平氏の各人物像により深く接することができ、知ることができてよかったが、この本では源氏の各人物像により接することができて、それもよかったと思う。
それにつけてもわからないのは、鎌倉内部の権力闘争時の動向である。
⭕️頼朝はともかく、頼家や実朝まで倒される異常に、どうして北条政子は抵抗しなかったのか?その理由の一端は記されているが、それにしても、である。
>幼い頃から知ってる子どもたちにどうしてそこまで冷淡でいられたのか?
>それなのに承久の乱の時に、いけしゃあしゃあと御家人たちに「将軍家の御恩」を演説できたのか?
⭕️鎌倉の有力御家人は、どうして北条氏の専横に抵抗せず、仲間を作って対抗しようとせず、各個撃破されたのか?
>いくら北条時政・義時がうまくやったとしても、また自らの地位が幕府が合議制となり向上したとしても、彼らの謀略は同時代に生きてれば分かり得たのではないのか?特に実朝まで倒された時点では。時政の追放など、この時代に生かされる処分など茶番だろうと。
何より、そのやり方が自分たちに向かってこないと思っていたのか?
負けると族滅まで懸念されるのに、一所懸命な鎌倉武士は一族の繁栄をこそ願っているはずなのに、どうして・・
以上は、今後の新刊で詳しく語られるかもしれないので、少し楽しみにしたい。
読後の感想
(以下は自分用のメモです。少しネタバレになるかもしれないので、ご承知おきください)
面白かった。義仲のことをもっと知りたいと思った。
ただ、北条氏も平氏と知ってはいたが、通信手段も限られてる時代に、世の中を俯瞰できる力や能力がそこまであったとは思えないので、どこまで時政たちが意図的にこれらを進めていったのかはわからないな。時系列的には、筆者の言うように途中でその気になったと思うが、牧の方の家系の繋がりや、池禅尼の意図までは、断片的だし、当たればラッキーなくらいな弱いものだろうし、若干結果論かな。