試験に出ない QED異聞
令和3年の正月になった。
年は新たになったが、手に取ったのは昨年に続き、高田崇史氏の20周年記念短編集。
つくづく、自分でも歴史と謎が好きなんだと思う。
大河ドラマの『麒麟がくる』を見ていても、やはり本能寺の変の真実は結局どうだったんだろうとかの思考が頭の片隅に浮かんでいる。
とはいえ、純粋に物語にもハマる。今回は、松永久秀が良い。
これほどドラマでじっくり描かれることも少なかっただろうし、興味があった人物なので、時代を先取りするような、精神的な強さや”梟雄さ”を見れて、嬉しかった。
この短編集でも、そんな人物に出会えた。
「木曾殿最期」で描かれた、木曾義仲である。
元々私は源義経が大好きで、平家物語などでその活躍にワクワクしたが、その中の『木曾殿最期』の段での義仲と今井兼平主従の悲壮な美しさには魅せられた。
義仲は一般には粗野に描かれた人物だが、この粟津の戦いの段だけでも、それだけではない、人間としての魅力を感じずにはいられなかった。
そうでなくては、乳兄弟で側近とはいえ、ここまで兼平たちから慕われないだろう。
そう感じていた義仲の「何か」を、この短篇では改めて引き出して、提示してくれた。
その義仲の姿に、私はとても惹かれた。
素直にこの素朴で仲間思いな義仲が本当に思えたし、納得できたし、読んで良かったと思う。
もう一つ、読後感が良かった短編を挙げておきたい。
それは、「クリスマスプレゼントを、あなたに」である。
前に他で読んだ気がするが、こういう読んで少し幸せな気持ちになる話が私は好きである。
他の短編も面白かったが、この2篇は、特にオススメしたい。