古事記異聞 オロチの郷、奥出雲
高田崇史氏の小説。
古事記異聞シリーズの第2巻。
今回は、「奥出雲」が舞台。
出雲の奥深さが徐々に明らかになっていく様子を、主人公の女子大生橘樹雅とともに追う。
前回、出雲に降り立った途端に事件に出くわしたように、今回も奥出雲に入った途端に事件は・・起こっていた。
この巻では、どうやら「クシ」が鍵になるらしい。
櫛は確かに、いろいろな神様の名前にもなっている。
女性が髪に挿す櫛は実用と装飾を兼ね備えたもので、昔からあっただろうが、どうしてそんなに重要なのだろうと率直に思いつつ、読み進んだ。
後、この第2巻は単純に奥出雲の旅行ガイドとしても良いんじゃないかと思う。
常と同様、事件の描写と主人公雅のモノローグ的一人旅が並行して描かれ、そのうちオーバーラップしてくる。
雅は縁結び占いに惹かれて、第1巻では松江の八重垣神社、そしてこの奥出雲でも元八重垣神社を第一目的(?)に、その間研究に必要な神社や施設を巡るのだが、そのいろいろな神社や刀・鍛冶の施設や地酒など、旅行記としてもとても楽しめるものになっている。
きっと作者の高田さんも、取材と称して巡られたのであろう。(良いなぁ・・)
他には、章のタイトルが全て”雲”に掛かっていたのが、このシリーズらしくて面白かった。
さて、物語中の謎は、最終的には事件も櫛も解き明かされ、蹴りはつく。感想は、
「事件」の方は、(そんなことで事件起こさなくても・・)と動機とか背景の描写に対しては思ったが、1巻より幾分マシになっていたように思う。
一方、「櫛」の方は流石の展開で、「そうなのか」と起源を知ることができたので良かったが、まぁ気の毒な歴史が元になっているので、(なんともはや・・)という気持ちになった。
そうしてこうして雅は次に「元出雲」に旅立つ予感がするのだが、第3巻も楽しみだ。