『龍馬 永遠の許嫁』(森真沙子)
『竜馬』の許嫁、千葉さな子さんの後日談小説。
前に司馬さんのエッセイ『千葉の灸』でも書いたが、私は龍馬と関係のあった女性の中では、凛とした、一本筋の通った千葉さな子さんが好きである。
なので、この本に出会えたことは、とても嬉しかった。佐那さんの、龍馬亡き後の、明治期の人生がどうだったか、やはり気になっていたからだ。
明治の時代に生きた、竜馬関係者である千葉さな子の姿が小説になった。
明治期のさな子さん、佐那さんは、華族女学校の職員になっていた。
許嫁の自分というものがありながら、勝手におりょうと結婚した龍馬を忘れようとしながら、忘れきれない。龍馬を描いた小説『汗血千里駒』が世の人々の関心を集める中、目を背け、その沈んだ気持ちで新時代を若い娘たちと過ごす日々。
しかし、そこで女子教育の先駆者である下田歌子たちと出会い、それが縁で龍馬を直接知る田中光顕、中島信吉、谷干城といった面々と出会い、龍馬を語らうことで、自分が知らなかった龍馬の活躍を目の当たりにし、そんな龍馬の姿を知り、自らの考えを改めた。
そうすることで自身の心にも江戸での個人的な思い出が鮮やかに蘇り、その龍馬と愛し合ったことを誇りとして、人生を歩んでいく。最後に、ようやく京都の龍馬の墓に参ることになった、そんな佐那さんの姿に、ちょっとジーンとした。
この小説では、そんな佐那さんの心情の変化と、それぞれのエピソードが同じ女性である森さんによって、イキイキと丁寧に描かれていた。下田、田中、中島、谷などの人物もよかったが、特に佐那子の心の内の描写は、ちょっと男性作家には難しかったかも知れない。
私も佐那さんの気持ちに寄り添って物語に入っていたので、読後、「よかったね」と、なんか一区切りついた、そのような気持ちになった。
読んで面白かったし、よかったと思う。