愉快な物語、面白い歴史、推理小説などのblog

どうせ見るなら・読むなら心から楽しくなる、未来が明るい物話がいい。そして時々コアな話も。そんな話を子どもたちや友人に紹介したい。司馬遼太郎と宮崎駿のファンが、そんなことを思いつつ好きな作品の感想などを述べてます。

『ゴーストブック おばけずかん』(2022年映画)

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『ゴーストブック おばけずかん』 (監督は山崎貴

願いが叶うおばけずかんにお願いすると・・ おばけが出てくる?

小学生男子3人が叶えたかった願いとは! 

 

感想は「夏休みの子ども映画!子どもたちとみんなで観れて、面白かったです!」です(笑)

 

夏休みに入り、こどもたちと映画を見よう、でも何をみようかな?と思っていた時、以前予告編を見ておもしろそうだと感じた、おばけずかんに行くことにした。

 

入りは何となく、少し前の子ども向けのハリウッド映画ぽい感じ(夜中に訪ねてくるものと、古本屋の雰囲気)と日本映画(学校の日常のシーンから始まる)がミックスした感じだなと思った。

けれど、子役みんな含めて演者の演技がうまいことと、山崎監督の脚本がよかったからだと思うが、どんどん話に引き込まれていった。

映画には、図鑑坊たちオリジナルの妖怪と、百目たち伝統的な妖怪(笑)とが一緒に出てきていたが、日本の妖怪ぽい、人間くさい憎めないキャラクターが魅力的だった。

筋としてはジュブナイルだが、おばけの世界に行くとセットもその世界の言葉も変わっており、観てる側としても、不思議な世界に来た感じがした。特におばけたちのVFXの出来がよく、素直にその世界に浸れた。

それと、星野源の主題歌がよかった。いわゆる「キャッチー」な歌。

エンディングで『おばけが出るぞ』のフレーズが繰り返し流れて印象に残る。なので、そのフレーズを繰り返しながら、子どもたちと帰路に着いたのは良い思い出。

正式な題名は「異世界混合大舞踏会(feat.おばけ)」。

 

そして改めて、山崎貴監督は、やっぱいい監督だなぁと思った。

子どもたちに向けて、面白い作品を撮れる。憧れですね。

「ALWAYS三丁目の夕日」で初めて知って良いなと思ったが、その後も「STAND BY ME ドラえもん」や「ルパン三世 THE FIRST」など、家族でいつも楽しませてもらってます。

 

最後に、これは子どもたちが観て楽しい映画ですが、大人も楽しめる映画だと思います。

夏休みに、何か面白い映画を見たいなあと思っている方、子どもたちと行きたい映画を探している方には、オススメです。

『団塊の後 三度目の日本』(堺屋太一)

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昨日、安倍元首相が、卑劣な凶弾によって斃れられた。

日本のことを考えて頑張ってこられた安倍さんに哀悼の意を表しつつ、国民の一人として、この暴挙に怯むことなく、改めて日本社会の未来のため、これからの時代発展を自由と民主主義によって支えたいと思い、通常ブログには楽しいことや興味本意で書いてきたが、今日はこの本を紹介しつつ日本の未来の方向性について書いてみたい。

 

社会の方向性をどうするかは、自由な言論と選挙を通じて国民が意志を表明し、その民意に基づいて決定されることが重要で、間接民主主義では選挙を通じて市民の支持を受けた与党が主導して政治を行う。その結果、継続して支持するか、修正すべきかは、次の選挙を通じて改めて反映される。

これは民主主義の基本的姿だと思うが、政治主導と呼ばれることが多い。

それは、従来の政策決定が官僚行政に偏っていたことからの対比を意味するのだろう。

安倍さんは、政治主導による政策の実現に舵を切ろうとしていた。

その政策には賛否あり、良いものも悪いものもあったと思う。

(また、一期の時は理想を求めていたが、二期の時は妥協的になったと思ったこともある)

しかし官僚がその性質上、長期目線で政策を立案・実行できない弊害から社会が停滞に陥っていたので、そこから抜け出すためには適切な方向性だと思う。

 

堺屋太一氏のこの小説でも、まさに政治主導により、「生きてて楽しい」方向に舵を切り、それを基に国の停滞を脱却しようというメッセージが託されていた。とても良い案だと思った。

 

同氏については豊臣秀長を読んで感銘を受けたが、高度成長期に経済官僚として政治を支えていた方であり、その行政手続的観点からの描写が特徴的だった。なので、ロマンと引き換えにはなるが、その分実現可能性を帯びた案に思え、良いと思った。

また、大阪の子ども時代に戦争と敗戦を経験されておられるので、「生きてて楽しい」ことを重視される姿勢と「中央」とは一定の距離を置いた俯瞰的目線も特徴的なのだろう。

 

小説は多くの方におすすめしたいと思うが、私の受け取った内容は次のようなものだ。

官僚に任せて「安全安心」な「天国」を実現した日本は、逆にその世界から出たくなくなり、その結果「生きてても楽しくなく」、「挑戦を恐れて経済的発展が遠のき」、「少子高齢化に陥ったことで、老後や目先のことへの興味が偏り、将来への明るい見通しや子どもたちへの目線が減っていった」のに何も変えようとしない。

この状況を、3Y(欲なし、夢なし、やる気なし)と表現されている。

これに対して、堺屋氏は、日本を「生きてて楽しい」「挑戦しようと意欲の出てくる」そのことで「人々も子どもたちも楽しく生きて、若い人や海外の人をも惹きつける国にしよう」と訴えられた。

その方向性は私も思い描いてはいたが、それをどう実現するのかわからないでいた。

それを、「本当に実現可能では」と思わせられるくらい、小説でわかりやすく面白く描かれているのがすごいと思った。今こそ広く読まれて、多くの方に日本の明るい展望を考えるキッカケにしてほしい本だ。

 

 

『グランクレスト戦記』(漫画版)

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グランクレスト戦記』(漫画版) 

ロードス島戦記水野良が原作。

四葉真がコミカライズ担当。

キャラクター原案は深遊

 

歴史好き、RPG好きには、とても面白い漫画に出会ったと思った。

弱小君主のテオが、天才魔法師シルーカと出会い、ラシックたち仲間の君主と共に民にとってより良い世界を目指す、という王道の路線である。

キャラクターも、テオは人を大切にする真っ直ぐな青年、シルーカは強気な天才少女、ラシックは豪放磊落な君主、といったようによく描かれていると思う。

その上で戦いの描写やテオにシルーカが惹かれていく姿も「いいね!」て感じで楽しい。

もちろん、絵も上手く、ヒロインのシルーカは特に可愛い。

 

私は白泉社の漫画サイトから知って、漫画から入ったが、小説とアニメがあるそうなので、これから見るつもり。

ただ、ひっじょうーに残念なことに、漫画版はアレンジが元々のファンにウケなかったのか、展開が早く、最後は7巻で「これからどうなるの!」というタイミングで終わってしまった。

正直これほど漫画が続いてほしいと思ったのは最近では珍しいほど、私には面白い作品だった。

 

ということで、作者たちを応援する意味で、古本屋で買うこともなく、新品を全巻買った。

いつの日か、復活して、水野さん、四葉さん、深遊さんたちで続編が出ると良いなぁと思う。

白泉社さん、お願いします!!

 

『トップガン マーヴェリック(TOP GUN MAVERICK)』(2022年映画)

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トップガン マーヴェリック』 

見てきた足で、感想を書いている。

 

一言、「最高」

 

まさに期待通りの映画。単純に面白かったのも久々。

 

感覚だけでいうと、まさに80年代のアメリカ映画を現代に蘇らせてた感じ。

もちろんトム・クルーズ演じる主人公マーヴェリックたちはもうおじさん世代で、子ども世代を導く存在であるが、アイスマンとの友情やグーズの息子ルースターとの関係もあり、困難なミッションに挑戦する姿など、続編としての人間ドラマがきっちり描かれている。

ただそれ以上に映像がすごい。戦闘機に自分が乗っているかのように錯覚してしまう。現代の映像や音楽の技術の粋が昇華してる。映画館で見るべしと思う。

 

あとは主人公の革ジャンの日の丸や台湾旗もあり、バイクはカワサキのNinjaなど、「おお!」と思う部分もあり。

 

まぁルースター世代よりマーヴェリック世代の目線で作られているので、現代の子どもや若者が見てどういう感想をもつかはそれぞれかもしれないけど(笑)

 

80年代の自由な世の中で子どもだった世代としては、オススメです。

『大河への道』(2022年映画)

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『大河への道』 

誰もが知っている、でも詳しいことは知らない、伊能忠敬とそのチームの地図作りにかける生き様。

 

もともと歴史好き、地図好きでもあったので、伊野忠敬の偉業と地図の素晴らしさについてはよく理解しているつもりでいた。好きでよく見ていたブラタモリでも時折名前は出てきていたし。

それと、『大日本沿輿地全図』が実は忠敬の死後に完成したということも。

しかし、「弟子がその後も頑張って完成させたんだなぁ」くらいの想像しかしておらず、彼の死後の地図作りがこれほど大変だったのかということは改めて映画で魅せられた次第だ。

 

映画は、現代と江戸時代を役者が二役で演じるという構成だが、やはり中井貴一橋爪功をはじめとする俳優のうまさが光っていた。それと、北川景子の美しさ。

 

最近いい映画ないなぁ、と思っている方や、歴史を楽しく勉強した子どもたちにはオススメです。

『白石と松陰の場合~学問のすすめ』など(司馬遼太郎が考えたこと4 より)

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学問のすすめ』を江戸時代の2大巨頭をもとに論じたエッセイ。

学問とは知識があることではなく、態度であること。それを新井白石吉田松陰という二人から学ぶ。

自分の子どもたちにどう学問をすすめたら良いかという難問に一筋の光明を見たように気がした(笑)

松陰は知っていたが、白石はよく知らなかったので、こんなにすごい人が江戸の政治を支えていたのであれば、それなりに良い時代であったのだろうとも思った。

 

『白石と松陰は、江戸時代に生きた知的偉人の話。

イタリア人のシドチという好奇心の塊のような人が日本に来て、当時家宣の政治顧問であった白石一人がようやく彼と知的コミュニケーションをとり得たという一事を描いている。

これは二人を描きたいというより、シドチはキリシタンにとって死地である日本に来るためにマニラで九州出身の日本人の二世から辿々しい日本語を習いやってきた、しかも当時の欧州の学問を16科目納めた知識人であったこと、そして白石も初めて接した西洋人について、事前にキリスト教や西洋の事情を知り得るだけ知った上で、誰もわからない日本語らしきものを、「マニラ経由で日本にやってきたなら九州の方言や発音が多分に混じっているだろう」と考えつつ聞き取りを行い、徐々に言葉が通じた。これはあてずっぽではなく、白石は極めて合理的な人物であったから、科学的態度から分析してこの行動をとったことが重要である。これらの二人の態度をもって、司馬さんはこれが学問だと感じておられた。

以上について、結論を次のように締め括っておられる。

明治以前の最大の人文学者である白石は、その学問はほとんど独学により得た。師匠はある程度成長してから木下順庵についた程度である。松陰も、学校教育を経ることなくしてその教養を深め、自分を成長させることに成功した。共通するのは、知的好奇心の強烈さ、観察力の的確さ、思考力の柔軟さであり、その結果として文章が常に明晰であった。さらに言えば天性なのか、学問を受け入れて自分の中で育てるということについての良質な態度を見事に持っていたということである。したがって、学校教育は必要だが、このような態度があることの方が重要であり、これさえあれば、僻地でも学問は成就する」

 

『ある胎動~「新井白石とその時代展」によせては、日本人の忘れていた学問を、門外漢の人々が思い出させてくれた、ということを紹介した話。

日本人は、明治に入り、以前の学問という遺産を投げ捨てて、西洋文明を導入した。

従って、大学でも西洋学問は盛んになり、かろうじて漢学講座は生き延びたが、「日本漢学課」という、とても優れた学問群が忘れ去られた。つまり、室町の五山文学や江戸期の思想や文学者たちのことである。

荻生徂徠新井白石、富永仲基といった名前が我々の近い先祖であるにも関わらず遠く感じるのは、明治維新という大文化革命が中国のそれと同様に凄まじかったのであろう。

 

しかし、時間が落ち着くと、それらを見直そうという動きが出てきた。面白いのは、それをやるのが、在来の漢学者や国文学者ではない人に多いというところだ。

その中で光を浴びたのは、頼山陽とその時代の知識群や、吉田松陰本居宣長新井白石な土である。特に、桑原武夫氏の白石の評が面白い。すなわち、「17世紀末から18世紀にかけて日本人が持ち得た最も偉大な百科全書的文化人であり、徳川日本時代の不利な環境に関わらず、当時の世界的百科全書的文化人、ヴォルテール、フランクリン、ライプニッツロモノーソフ、顧炎武など、10人の中に当然数えられるべき視野の広さと思考の独創性を持った先駆者であった」ということであり、改めて白石を知りたくなった。

 

『燃えよ剣』(2021年映画)

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燃えよ剣』 

幕末を鮮烈に駆け抜けた新撰組副長土方歳三の生涯。原作司馬遼太郎

 

幕末維新の頃は、ほんのわずかな期間活躍したことでも、その後100年経っても人々の記憶に残る。

新撰組はそのうちの一つの組織であり、数年間しか存在していなかった。

司馬さんの『燃えよ剣』では、その近代組織として新撰組を作り上げた土方を主人公に物語を展開しており、それが発表当時の高度成長期の日本企業の管理化が進む時代にマッチして、土方の生き方と共に多くの人を魅了したのではないかと思われる。

 

その映像化は度々なされていたのだろうが、本作においての感想は次のようのだった。

・主役の土方は、岡田准一が好演していた。多摩時代の天然理心流試衛館の若い頃から、京都に上京して新撰組を結成、近藤を支えて副長として活躍した時代、そして鳥羽伏見の戦いから沖田ら仲間とも別れて函館戦争に至るまでの最晩年まで。それぞれに原作で読んだ土方のイメージに近いと思った。

・剣戟(チャンバラ)のシーンが多くて、チャンバラ好きとしては楽しかった。ただ惜しむらくは、岡田の剣戟は上手かったが、他はもう少し上手ければ、もっと良かったと思う。

芹沢鴨伊藤英明の演技が良かった。酒乱でありながら剣豪、女好きという役になり切っていた。

近藤勇鈴木亮平も、人柄がそうであったのではないかと思われるほど、らしくて良かった。

・少し驚いたのは、沖田総司役の山田涼介で、司馬さんの描く沖田もいろんな役者さんが演じてきたと思うが、素朴な感じが持てて良かったと思う。

・山南敬介の安井氏は、少し過剰であったように思う。ただ、そうでなくては土方系に対抗できる力になり得なかったのかと考えると、実像も肩肘張っていたのであろうか。

箱館戦争での有終の美を飾る最後も、土方が馬で駆けて撃たれるシーンが颯爽としてカッコよかった。

・映画全体として、この時間内に満遍なく主要なエピソードがまとめつつ、原作のイメージに結構忠実に作られていたと思う。

 

観終わって感じたことは、あの時代は急な環境の変化の中、生身の人間と人間がぶつかり合い、討幕佐幕含めて誰しもが必死に生きていたことで、改めて感慨深かった。

それも、剣同士の戦いや銃弾の飛び交うシーンが多く描かれていたことと、池田屋事件で店員のふりをした山崎が志士たちの刀を隠したり、池田屋の人たちが志士の人たちを逃がそうと懸命になっている姿などのディテールを描いたシーンにより、一層感じられたと思う。